料理は冷めてゆく時に味が浸みてゆく
そんな話、よく言われる料理のコツというのがあります。
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要するに浸透圧とか細胞が壊れてくれるとか、そんなことも含めたお話です。
火にかけて熱くするだけじゃいけません。
少し冷ましたら美味しいものもたくさんあるものです。
夏なんて冷えたものを味わうにはうってつけ。
冷汁とご飯。なかなかよいです。
それにこの話、なかなか含蓄の深い隠喩でもあるとアタシは思っています。
熱く議論を戦わせているうちは先が見えません。相手の理屈におかしいところばかり見てしまいます。そしてお互いの主張は譲れません。
平行線。
ウチの嫁との喧嘩でもそうですw。よくやっています。
そしてなんとか水入り、お互いにクールダウンしてゆく頃、その頃にやっと何かの結論、打開策や真実というものが出てくるものです。
交渉ごとでもそうでしょう。他に、相談事、お説教、なんでもちょっと冷める頃が一番心に染み入る、成果が見えてくるものでしょう。
好きなだけ怒鳴りあい、主張するだけ主張すればよい。落ち着いてみたらいい知恵が出るもの。
冷えてゆく頃が一番か味わいがあるなんてのはなんでも同じ。
料理と同じ。
冷汁をご飯にブッカケて食うのは涼しくて美味しい夏の贅沢w。
ラブラブの二人が熱い夏を過ごします。
今は夏真っ盛り。
焼けつく太陽に負けないほどの熱情は心まで溶かす。
燃え上がる恋心。死んでも離れぬ添い遂げると二人密かに誓い合う。
周りのことなど考えようもない二人。
毎晩のように抱擁し、汗だくになって愛し合う、夏の土蔵、物陰での秘め事。
しかしそれは若さゆえの過ち、どうせひと時のもの「番頭との恋なんてハシカみたいなもんさね」なんて、大隠居のババアが大威張り、フンなんて小馬鹿にする。
「丁稚から育ててやったのに、そんな恩知らずなど放り出しておしまい。」
そんな陰口が聞こえてくる。狭くなる肩身、問屋に同情までされる始末。
家には決まったことがある。由緒家柄、格式体面。
番頭風情とは結ばれるなど許されない。二人に自由などない。
家を継がねばなりませぬ。
子を作らねばなりませぬ。
それならいっそ、二人で身を投げようか。
絶望しあの世で二人で夫婦になればそれも本望。
ふと気付くと、もう命も恋もおしまいか。
冷たい風が二人の心を抜けてゆく。風鈴がどこかで鳴いて寂しさひとしお。蝉の声すら嘆きを含める。
情熱は哀しみに、冷めてゆく希望。するとふと知恵が浮かんだ。
そういえば卸の問屋さん、あそこは子供がなくて嘆いてた。老舗の問屋は老夫婦に老番頭、丁稚はまだ八つの子供。
あっしがあそこの養子になればよい。
番頭としてお付き合いもある。
お願いしてみよう。
そうすればもう丁稚上がりの番頭でもない。お嬢さんと結ばれて一緒になれる。
両家がひとつになれば互いに家督も大きくなりましょう。
商売だって大きくなりましょう。
命がけのつもりで問屋の家に飛び込んだ二人。
問屋は驚いたが喜んだ。
働き者のお前さんからわざわざ来てくれるなんて、実にありがたいこと。
二人は結ばれる。大きな婚礼。
因業婆あも黙るしかない。
落ち着いてみればなんてことはない。
障害など乗り越えられる。
両家を盛り立て、問屋の隠居を実の親のように大事にする。娘もよく店を切り盛りできている。明るい店だ、そろそろ子供もできるだろう。
めでたし、めでたし。
なーーーんてww。
あらら、なんだか、これは冷やし汁どころじゃないねww。
器料理になっちゃった(笑)。
おそまつ
