「もみじおろし」というもの
処分品伝道師にはまだ遠い未熟者、毎度お目汚しをいたし恐縮でございます(笑)。
☆
「もみじおろし」というのがあります。
先日のヱスビーのチューブ調味料にもあります。あれもネギ塩と同じくらいちょっと失敗かなと思うものです。
「もみじおろし」というのは瓶なんかでも売られています。すごく高いの(笑)。
材料からしたらちょっと信じられません。
私はその「紅葉おろし」というものの存在を知ったのは嫁から教わってからです。
それ以前には知りませんでした。
毒親の元で育った私は、シャケとせいぜい海苔、そして一人で立ち食い蕎麦ばかり。
心の貧しい子供時代を過しました。
たまに出るカブや大根の味噌汁は常に煮詰まってしまっていてどろどろ、気持ちが悪くていつも残していた。
牛肉は食べたことがなかった。
オカズは食べられればほとんどが小さなシャケ。
ご飯はビショビショで家族で揃って食べた覚えが殆んどありません。
給食がご馳走で、街の定食屋やかけ蕎麦が私の故郷の味です。
家族が揃えば意味もなく皿が頭に飛んできて、コブだけが出来た食卓。
・・・まあ、おかげで今はたいそう食事が美味しく味わえているんですけれども(笑)。
そんな私ですから、こういう食卓に関する知見というものがまるでありませんでした。
嫁と知り合った頃のことです。
鍋をやろうと言って彼女とスーパーに出かけました。
そして材料をまるで新婚夫婦のように色々と買って、私はひどく楽しかった。
しかしそんなことは気取られないよう落ち着いた顔はしていましたけれど。
するとふと、嫁が言うのです。「どうせならもみじおろしにしよう」と。
???
突然言われたその言葉、その意味が私にはさっぱり分かりませんでした。
もみじが紅葉で赤くなる季節、そんな初秋の鍋でした。
なんとなく季節感のようなものは感じた。
知らないというと嫁が得意げにアタシに教えてくれたものです。
大根と唐辛子が混じってちょうど紅葉ぐらいの赤さになった調味料です。
「もみじおろし」というのは、作り方がへえと思わせるものがあります。
寸胴切りにした大根に菜ばしで穴を開けて、そこに鷹の爪、つまり唐辛子を突っ込むのです。
そうしてそれを下ろし金で摺って大根おろしにすると、アラ不思議w、赤い唐辛子の辛味の混じった大根おろしができるというわけです。
なかなかの知恵を感じます。
このネーミングもなかなかのものです。
これにアタシはすっかり感心してしまった。
なんという文化的なことかと。
アタシはその言葉さえ知らなかった。
つくづく嫁を尊敬した。
育ちのいい女だとアタシは感心したものです。
小津なんかの映画なんかでもあること。
ボタンがほつれているからと、恋人がささっと裁縫箱から針と糸を出して直してくれる。
「ちょっと脱いで」なんて言う。
縫うその前、針をちょちょっと、自分の髪の毛でこすって髪の油をつけてなめらかに針が通るようにする。
その仕草といい、やっていることがなんとも文化的ではありませんか。
鍋の季節を過ぎて夏になっても、紅葉おろしは蕎麦や冷たいそうめんにも合うと思います。
まだウチはそうめんは始めていませんけれどもww。
チューブなんかでなく、自家製の「もみじおろし」。
おうぞどためしください。
めいしくおしあがれ
