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劇団、アタシはどんな印象を残したのかしらねw


 そして、その劇団に通っていたある日のこと。

 事務所に行くと、座長が麻婆豆腐を食べていた。


 座長はアタシを自分の前に呼んで座らせた。
 「今日は稽古はなしだ」

 座長はつっけんどんに言った。
 やはり自分を大きく見せようとしていて、なんだかゴリラのように無理やり肩をいからせていた。

 それはとても蒸し暑い日のことだった。 
 周りには団員のみんなが、なぜかめいめいに座っていて、アタシと座長の様子を遠巻きにして眺めるようにして見ていた。





 座長は黙って、暫く汚らしそうにその麻婆豆腐を無言で食べ続けているの。
 ジュルジュルと汚らしい感じですすって、それこそ、今思い出したら吐きたくなるような感じにワザとして座長はそれを食べていた。
 ちょっとワザとらしかったけど、そういうことを見せているつもりなのかな、とは思った。

 見ている劇団のみんなが、それを嫌そうにして顔をしかめたのが横目で見えた。
 あたしはぼんやりしたいつもの生気のないまなざしで座長を見ていた。

 そして座長はアタシに、その食べていた皿を突き出して言ったの。

 「食え。」

 アタシはそのままその皿をスッと受け取ると、それを何の抵抗も見せずに食べた。

 全く何の感情も沸かなかったわね。
 だってアタシは自分をすべて造っていたんだから。
 それは今の自分が振り返っても不思議なぐらい。




 アタシは普通にそれを食べた。
 熱そうにしたりしてw。
 実は全然それは熱くもなかったんだけど、悪い味ではなく感じた。
 座長の唾液がこってりと入り混じっていたはずだったんだけど(笑)。

 座長はといえば、少し驚いた顔をしてアタシがそれを食べるのを見ていたんだけど、アタシはそれに気づかないフリをした。相変わらずの無感情、無反応。
 アタシはそうやって、テーブルをひっくり返されるのだけは御免だったから。


 結局、その日はそのままアタシは帰され、事務所を出た。
 最後に座長がビールをくれたんだけど、それは座長が何か心配してくれたのか、それは分からない。
 アタシには別にどうでもよかったんだけど。

 アタシは外で吐いたりもしなかった(笑)。






 劇団には、「事務長さん」というまとめ役の人がいて、次に事務所に行くとアタシだけだった。

 その頃は公演のための台本がまだ完成していなくて、みんなのストレスになっていて、イライラ。
 もういいや、だいたい決まっている配役で稽古をそろそろ始めよう、なんて言っている頃だった。バタバタしていたの。

 その「事務長さん」って人とは、アタシはほとんど話したことがなかった。
 確か入団の面接に行った時にちょっとプロフィールとか話しただけだったかしら。

 もちろんその時からずっと、アタシはおかしなヤツだったのよwww。

 アタシはお金の計算とか色んなことをマネージしている人ぐらいに思っていた。
 会計士みたいな外見の、ごく普通の人だった。
 その日、事務所にはなぜかアタシとその人しかいなかった。


 それは暫く劇団に通った頃だった。
 麻婆豆腐を食べた次に行った時のこと。
 次に事務所に行った日のこと。

 その事務長さんに、アタシはいきなりクビを宣告されたの。


 扇風機が虚しくうなる中、事務長さんは少し困った顔をわざとらしくしてみせ、アタシに言ったものよ。

 「もうウチには来ないでくれないか」

と。

そして言った。

 「みんな、君を怖がっているんだ」

って。


 アタシは自分の正体がバレたのかと思ってちょっととまどったけど、結局、その場には座長も他の役者も、誰ひとり姿を見せず、アタシはそのままその日、その劇団をクビになった。

 それっきり。






 それから数年後のこと、アタシは帝国ホテルで嫁と一緒に食事をしていた。
 レインボルームというレストランがあって、ちょっとした食事をしていたの。

 ふと見ると、テーブルを縫って、向こうから歩いてくるのはアタシがクビになった劇団の座長の大師匠だった。
 例の大御所の大俳優だったの。

 もちろん、そこはみんな紳士淑女が食事をしているところだから誰も彼に話しかけない。寄って行ってサインをねだる人もいなかった。

 ところがアタシはスッと立ち上がって、まるで迎えるようにして、うやうやしくにこやかに手を彼に差し出したわ。

 よく見かけるその大俳優は立ち止まってうつむいていた顔をあげてこちらをふと見た。
 彼はよくスクリーンで見かけるような、いつもの疑り深い目をしていなかった。
 それがとても印象的だった。

「アタシ、XXXXさんの劇団をクビになった
      かつてのあなたの孫弟子です(笑)。」 


 アタシはそう自己紹介をして、その大御所に握手をしてもらった。
 大俳優は微笑すると、ちょっとうなづいて応えてくれ、アタシの目を見た。

 とても柔らかい、フワフワとした手だった。

 出会いはそれだけ。




 もちろんその時はもうあの座長のことも劇団のことも、どうなったかまるで知らない。
 今でも調べるつもりはないけど。


 今、とっくにその大御所の役者さんは死んでしまったんだけれど、あの時、アタシはあの大御所にどんな印象を刻んだのかしらね(笑)。

 そしてあの劇団の座長にはどんな印象を残したのかしら。


 アタシは、みんなから「キチガイ」なんて思われたのかしらwww。

 そうだとしたら、きっと光栄なことよね。


とても感謝しています

 さりがとう、まりがとう、なりがとうwww


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ジャンル : 日記

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Re: No title

コメントいただき
嬉しく思いました

No title

これは実話ですか?
劇団に入っていたいたのですか???


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