婆さん、それはやってやんよw
出かけようとしたら、隣のばあさんが気がついたらギコギコとノコギリで垣根になっている庭木を切っていた。
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まあ道具もないだろうからしょうがないんだろうけど、ギコギコと、歳をとってすっかり縮んだ体で懸命に庭木の背を低くしていた。
ここんとこお互いに見かけなかった。
どうも自分の背丈にしておけば手入れが楽になるとやっているらしい。
あまり生活リズムが合わないから何をしているかトンと知らなかったが、どうやらここんとこずっとおやりになっていたらしい。もう結構切られていた。
大変な作業だ。
「それ、よかったら、おやりしましょうか? どうせすぐですから。」
なんて言って申し出たらキョトンとしている。
「へえ。」
「えーですから、(笑)。うちに機械があるんです。すぐに切れてしまいますから、ここんとこから、ずっと、この高さにすりゃあよろしいんでしょ?」
と。
「はあ、はあwww。ええ。」
「やらせてください。いいですね。10分もかからないですので。」
はっきりした返事はなかったが、まあ意味は分かったんだろう。
ボケているのかは知らん。
嫁によれば耳が遠くなっているだけ、そんな話だったが。
その垣根にもなっている庭木、すでに色々と切ってウチが丸見えになりかけている。
ウチにはいい目隠しだったのだがなぁwww。
すると嫁が言った。
「やめなさいよ、ウチの庭木ってわけじゃないんだから」
ああ、まあそりゃそうだ。
俺はああいう時、別な言い方をした方が通じやすいというのは知っている。
「なんだ、よお、婆さん、婆さんよぉ。それやっちまうのかい! 俺がやってやんよ!」
なーんてね。こうすりゃ一発で通じるのは分かってる。
しかしなんだか品もないので、隣人にまでこの手は使いたくはない(笑)。
作業はわずかの時間で終わった。
充電式のジグゾー、ノコギリであっという間。
残った枝は片してもらう。実はそっちの方が大変なんだけど・・・www。
それにしても春の芽吹いているシーズンに切るのはちょっとマズくはないだろうか。
あーあ、芽なんかでちゃって。
人の家のことながら、樹が弱らないか心配ではあるが、どうせこっちがやらなければ婆さんは一人でやろうとするだろう。そしてそのうちバッサリと丸裸。
仕方がない。
人のためじゃない。
こっちのためだ。
そうすりゃウチが目立たないように隣の庭木がウチを隠してくれる程度に切っておけるというもの。
昨晩は静かな夜だった。
いつになく静か。
十時ぐらいに郵便を出しに行ったら、あたりがしーんと静まり返っていた。
それがとても心地よかった。久しぶりだ。
大晦日の頃と比べても格段に静かだったろう。
ずっと昔のこと。それこそ昭和の子供の頃に味わった都会の静寂があった。
