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誰も止めてはくれない

 短い人生、何度か死ぬ間際までいった。
 刺されたとか、戦乱のさなかに飛び込んでいったとか、そういう出来事とは関係がなくだ。

 追い込まれ鬱気味になったり、終わりにしようと思ったとき、あれを俺は「死ぬ間際」だったと振り返ることがある。

 懐かしく優しい思いでその時のことを俺は振り返る。


 仕事が行き詰まり、徹夜が五日ぐらい、どうしても障害から復旧できない。なるはずのものがならない。
 誰もいず独りでやっていて、もう首を吊ってしまおうと思った。

 だがオフィスにはちょうどよい梁はなかった(笑)。

 そんなことが三度はあったろうか。チームで動くべきだったと思う。

 「孤毒」なんて言ったりする。
 その毒素は強烈なものだ。



 ガキの頃には数度あった。
 夜にタバコを買いに行かされた時、マンションの屋上に登って下を見下ろした。
 なぜ飛ばなかったかは覚えていない。


 そしてやはりガキの頃、クリーニング店のワイヤーハンガーで実際に首にかけてやったことはあった。
 背の小さかった俺は、扉の上にあるストッパーにそれをかけて吊った。
 ワイヤーハンガーの針金は惨めに切れた。


 電車だけはなかった。
 小学生がリーマンのような生活をしていたのだが、なぜか飛び込んだりすることは考えなかった。
 大勢の人が毎日のように飛び込むような路線だった。
 混雑は毎日が殺人的で、しょっちゅう電車は止まっていた。


 腹を中途半端に切ったこともある。
 切腹は責任を取ることでやるものだと、サムライの掟を考えて思い直して止めたが、いつまでもその傷が膿んだ。
 カサブタを取るのが楽しみになった。


 誰も死ぬことを止めない。止めてはくれない。

 不思議な偶然から、俺が止めたことは何度かあったけれど。


 ある夜明けの朝、バイパスを嫁とバイクで走っていたら、女が緑地帯を一人裸足でウロウロしていた。
 俺はバイクを止めてその女のところに戻った。

 トラックが凶暴な騒音を上げて通り過ぎてゆく。
 女が走ってくる車に飛び込もうとしているのが分かった。

 降りろと言っても泣き続けるだけの女。


 俺はふと思いついて嫁の腕を取りその女に見せた。
 どうだ、手首を切ったらこんな風になるのだ。いつまでも残るのだ、と言った。
 そうドヤしつけ、降ろして警察を呼んだ。

 嫁の手首には傷があった。
 嫁が鍵をなくした子供の頃、玄関横の小窓に手を入れようとしてガラスを割ってついた傷だというのは前から知っていた。

 子供の頃のものだからあまり濃い傷ではなかったが、女は息を飲んでそれを見つめ、嫁の顔を見た。嫁が黙って笑いかけると女は従った。


 嫁は死ぬようなタマではない。 タフな奴だ。
 後でちょっとこのことは謝ったが、そんな傷でも役に立ったと、嫁はちょっと誇らしいと思ったような、キツネに利用されたような、なんとも言えないような顔をしていた。



 二人とも少し酔っていた。 今なら逮捕だ。


のんだらのむな


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padroll さんの人生は小説にでもなりそうですね。
私自身感受性が強いと思っていまいたが、私は普通だなぁ…なんて思いました。
芸術肌なんでしょうかね?


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