法は無知を助けない
ちょっと前、面白い判決があった。
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80歳ぐらいのドライバーが女子高生をはねて殺してしまい、その罪が問われた裁判の判決があった。
判決は無罪。
無罪というからには刑事事件、交通事故の事件ということだろう。
無罪という申し渡し、判決の主文が出ると傍聴人らは怒り始め、席をそそくさと立ちはじめたそうだ。
それに対し、裁判長は着席するよう傍聴人らに促し、次のことを述べたそうな。
「これは同じような事故が起きないようにするための判決という意味もある」と。
ますます傍聴人は訳が分からない。
この判決は、ネットでもトンデモ判決などと言われたようだ。
「同じような事故」、その意味を考えた者はいなかった。
裁判官は本来なら傍聴人に説明する義務などない。
ただのヤジウマ扱いだ。
しかし、そこまで司法が説明してやっているのに聞かない国民、愚民がいる。
事故は、薬を処方された80歳ドライバーが、その薬の処方によって眠くなったり意識を失ってしまう可能性があることを担当医師から伝えられていなかったことから起きたという。
その上での判決だった。
つまり、悪いのは担当医師ということ。
ただ、裁判所は馬鹿に「こうしろ」「ああしろ」「こうしたらどうか」なんてことは言わない。
それでもヒントはくれた。
ご親切すぎるほど親切な判決だった。
結局、遺族は、その医師を訴えるよう加害者の80歳ドライバーに三角請求しろという判決なのだ。
80歳ドライバーがその医師を訴えるべきなのだ。
遺族がその医師を直接訴えることはできない。
なぜなら直接の関係はないから。
遺族がその医師を直接訴えれば、直接には関係ないのだから原告不適格になる。
検察もその医師を「告知しなかった」として、刑事被告人にまではできまい。
しかし遺族は、その加害者に医師を訴えるよう求める三角請求はできる。
それをすることで、告知をしなかった医師は過失が問われ、賠償責任が発生することになる。
これにより、同種の事故は防げるのだと、わざわざ裁判長は説明したつもりなのだが・・・。
勧善懲悪を求める愚民にこの判決が理解されることはなかったようだ。
法は無知を助けない。
当たり前の話で、司法がわざわざ三角請求しろと勧めることは公正ではない。
説明がわかりにくかったのは罪ではない。
裁判しろと煽るようなことは司法はできない。
魔女狩りを求めた連中はその先を考えなかったというだけだ。
同じように、誰かが告発しなければ違法はまかり通る。
誰かがやるだろうと、みなが怠慢に甘えていれば、裁判所はわざわざこれを是正しない。
人任せはかくも罪なのだ。
コロナを故意にばら撒いた阿呆が死んだそうだ。
あの時、ネットですらほとんどの連中が「逮捕しろ」としか言わなかった。「なんとかしてくれ」と、まるでお上まかせ、他力本願だ。
なぜ賠償請求を店はしないのか。
水商売ごときがいくら損害を受けても客を訴えるなどおこがましい、どうせ考えるのはそんなところだろう。
店は遺族を訴えることもできるのだ。
なあなあ、馴れ合いのまま、適当にルサンチマンに酔う。
それが大衆だ。
呆れる。
