「美味しいものをずっと作ってあげたのに!」
嫁とよくケンカをした。
☆
怒鳴り合ったりする。
たいていは俺のモラハラが原因だ。
考え方の違いをハッキリさせようぜ。お互いに正直に意見をぶつけ合えばいい。
俺は遠慮しなかった。
しかしいい杉が多かったか。
昔、そんな風にケンカをして、その時、嫁から気になることを言われたことがあった。
それが表題のこと、「美味しいものをずっと作ってあげたのに!」という言葉だった。
これにはなんだかぐっときたもの。
俺は別に旨いものを食わせてもらえるから付き合ってるんじゃねえだろ?
作ってくれる料理が旨かったから可愛がられてるんじゃねえだろ?
お前は料理だけ作ってるわけじゃねえ。
しっかりしてなきゃダメだと言ってるだけだ。
だらしのないことをしたから俺は叱ったんだ。きちんとしろ。
言い訳をするにしても、いったいその言い草はなんだ・・・。
なーんて、実は正直、俺はえも言われぬ悔しい気持ちになっていた。
俺は男として、嫁から何を求めていたと思われていたのだろうって、ね。
まだ体を求めていたとか、そう言われた方がマシだ。
ペットじゃねえんだから。
美味しいものをもらってもナツくってもんでもねえだろ。
俺をなんだと思っているんだ。
ジェンダーというヤツに叩かれた気がした。
それから、なるべく俺が料理することにしたのだった。
元々、洗いものは嫁の手が荒れるのが嫌で俺がやっていたが、料理も俺がやるようになった。
もちろん俺は言わせてはくれねえだろう。
「美味しいものを作ってやってるだろう!」なんて(笑)。
時々、嫁が作ってくれる料理は相変わらず美味しいけど。
めいしくおしあがれ
