不味くてもその場で言っちゃダメなのよ
以前から何度か紹介した「アニマル君」。自分を「美女と野獣」で、俺にはいい女がきっと来る「ビースト」だって言うから、「いやお前はアニマル」ってんだと、「アニマル」と呼んでいた。
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学生時代のことで、私はそいつと結構な時間を付き合っていたものです。今はどうしていることやら。
それこそ彼が心療内科なんかに通ってクスリを処方されてるなんて言うもんだから、一時は一晩中話しを聞いてやったりして、そんなものに頼るな、お前の心はお前が知っているはずだ。人任せにするな、そういう医者はインチキなのだ。信用するな。お前は自分の大事な時期をクスリ漬けにしてしまうつもりか、なーんて、
親身に話しちゃったりして。
ええ。いやアタシも若かった。
いや、今でもアンまし変わらない(笑)。アタシはそういうことに巻き込まれやすい。お目出度い人間だ(笑)。
で、まあ、そいつが段々と落ち着いてゆき、アタシと飯を食いに行ったり、そこそこ付き合うようになった。
それでもいささか問題のある野郎ではあります(笑)。
なにしろ「俺にはいい女が来るはずだ」なーんて恥ずかしげもなく言うんだから(笑)。
でね、ある時、二人で街をブラブラと歩いていて、鉄火丼が安くて「魚河岸直送のマグロ」なんて書いてある店を見つけた。
ちょっと小腹が減ってたもんだから二人して、よし食っていくかなんて行って寄りました。
それでね、品物が来て、二人して野郎がテーブル差し向かいでマグロ丼を食った。
アニマルはモグモグと品のない犬食いをしながら、何を思ったか、「俺はこんな不味いマグロ丼は生まれてこの方食ったことがない。これはまるで犬の餌だ」なーんてブツブツ言い始める。
食ってるその場で言うんですよ、それをwww(笑)。
なんとも(笑)。
そしてひたすらマズそうに食い続ける。
慌しく、まるで犬のエサのように食べている。
アタシはその場は黙っていてね、相手にせずに食いました。
もちろん、そのアニマルだってちゃんと残さず食ったものです。金がもったいないだろうからねwww(笑)。
そんでやっと店を出ると、アタシはアニマルに諭したもんです。
食ってる途中に、不味い不味いになんて言って食う理屈があるかよ。
せいぜい黙って食って店を出て、ほとぼりが醒めて楊枝でも咥えている頃だろ、そんなことを言っていいのは。
そのあたりになればやっと、あれはひどかったねえ、なんて、そんなことが言えるってもんだ。
不味いものを不味いと言いながら食ってたらますますマズくなるじゃないか。
ってね。
アニマルはキョトンとして、アタシのそんな理屈が分からないようでしたな。
そりゃ不味いものは不味いでしょうけどね。
しかし、決して食ってる最中に言うもんじゃない。
どんなものでも、感謝しながら美味しいと言って楽しんで食うべきなんです。ココロひとつで美味しくもマズくもなるってところがある。
そして反省会になれば、せいぜい毒づけばいい。
不味くてもその場では言わないものなのよ、日本人は。
そこを大事にする。
アレレ? あのアニマル君はちゃんとした日本人だったろうね(笑)。
おだいじに
