おしゃべりな家電、電子レンジ
ウチの電子レンジも実によく喋る家電だ。しかしこれは変わっている。
ナショナルのNE-TM1という機種。
もうメーカーの写真だけでも分かるシンプルさ。
デザインが悪いものは我が家では使わない。自慢のレンジだ。
このレンジは小型で容積が小さく、奥行きもない。気に入っている。
意味のない時計もない。スイッチはダイヤル式。
途中で扉をオープンしても、設定したレンチン時間のタイマーが元に戻ることはない。中でムラがないよう位置を変えて扉を閉めるとそのまま続行してくれる。扉をオープンしてしまうとリセットされまたタイマーボタンを押すような必要がない。
出力も大きくないから無駄がない。なにより小型だ。ウザくない。
三段階強弱のトースター機能と解凍付きのレンジ機能、がある。
探しに探して手に入れたものだった。
終了すると例によって「ピーッ、ピーッ」と教える。
ところが、このレンジは喋るどころか、いつしかイレギュラーな動き方をして暴走するようになった。
異常動作が日常茶飯事となり、言ってみれば怒鳴り散らすようになったのだ。
いささか恐怖を感じながら、こいつと付き合う覚悟を決めるしかないww。
おしゃべりどころではない。こいつの騒ぎ方はハンパない。
当初、これを使ってレンチンして終了すると「ピーッ、ピーッ」と告げてくれた。穏やかな音ではないがキッチリと出来上がりを教えてくれた。
そのうち様子がおかしくなった。
終了して取り出して食べていると、またキッチンでレンジが「ピーピー、ピーッ、ピーッ」と何度か繰り返して呼ぶようになった。
もうとっくに中のモノは取り出したんだが、おかしいと思ってみてもタイマーは終了していてスイッチが入るわけがない。
ところが放っておくと「ピッピカ、ピッピッ」などどやたらと騒がしくなってくる。
また行ってみると、やはりレンジのダイヤルは閉じていて動かないはずだがピーピーと鳴っている。イライラと神経質そうに音を鳴らすたびにインジケーターのランプが点滅する。
ダイヤルも戻してやる。それでも何かピッピと話している時さえある。
あまり長く放置しておくと収まって、今度は愉快そうに「ピッピ」と鳴いたりする。
その挙動は不規則だ。
たいていは不機嫌なようだ。それも怒っているように激しく点滅とピッピカと警告をして電子レンジが騒ぐのだ。
ダイヤルをいったん回してやって、そして戻したりするとたいがいは直ったりした。
しかしわけがわからない。
レンジから食品を取り出して、とっくに終了しているのにレンジが騒ぐのだ。
レンジ「おい、チンしてやったぞ。取り出せよ、もう出来たぜ。」(訳)
レンジ「なにやってんだよ、早く取りに来い。すぐ食うんだろ。」(訳)
レンジ「どうした、どうしたよ。おい!なにしてんだ! まだ食品が残ってんだよ!」(訳)
レンジ「いい加減にしろお前! マジで爆発させるぞ、ちょっとこっちに来い、おい!」(訳)
なーんて感じでとんでもない騒ぎである(笑)。
どうもこのレンジは下にトレイを置かないといけないことになっているようで、トレイがちゃんと乗っているか感知するため微弱な電流を流して正常な状態か検知しているらしい。
どこかその通電するための接点が汚れていたりして、通電が不安定になり、トレイが乗っているのか食品が出来たのか、自分で分からなくなっているようだ。
それで「トレイがないぞ」「食品がまだあるぞ」と騒いでいるようなのだ。
そのトレイがズレていたりするとピーピーと鳴って正常に動いてくれないことはあった。
「こともある」などと曖昧なのは、もはや規則性がつかめずこのレンジの激しくなった気性の原因がよく分からないからで、どうもウチのレンジはこの機能をきっかけにして何かの魂が入ってしまったようだ(笑)。
モデルの番号も暗示的だ。TM-1って。
ターミネーターかよw。
あと二百年ぐらいすれば地球を滅ぼすようになるだろうか。
ええっ?このレンジの姿のままでかいw。
地球温暖化攻撃でもして滅ぼすんだろうか。
まあ、俺を滅ぼそうとしなければいい(笑)。
しょうがないのでこれを黙らせるのに人間としての小賢しい知恵を使うことにした。
レンジの電源コードにスイッチを付けてしまい、直接電源を遮断することにしたのだった。
出来上がって食品を取り出したらメインスイッチを切断する。
いくらAIでも電源がなければ動かないだろうというわけだ。
今はなんとか電源の遮断をして使うことが出来ている。
ありがたいことに時計などの馬鹿な機能のないシンプルなレンジなので、手なづけてしまえば問題なく使えている。
そーいやむかーーし「星新一」ってのがいたなぁ(笑)。筒井康高とか、あんな感じかw。
今でも、メイン電源を切るのを忘れると時々は「ピーーーッ」と声をかけてくる。中の頭脳は何を思うのだろう。
