粗食でも豪華に盛り付け
粗食か素食かの議論はともかくw、贅沢が続いたのでシンプルな食事にしています。
こんなんでいいんだ(笑)。
玄米ご飯と糠漬け、今回は都合により冷や汁もなしです。
なにしろ、冷や汁は前の晩から作って冷やしてないといけないもんですからw。
糠漬けのこの盛り付け(笑)。
なかなかゴージャスではないか。
ゴーヤ、牛角大王唐辛子、茄子、ダイコン、カブ、ニンジン、シシトウ。

こんなことは他人様にはまるで興味ないかも知れませんがアタシは満足。添加物のない世界。素材の味を楽しむ食卓。盛り付けは上手に出来たしらw。
でも、野菜ってお高いのです。
単にお値段的なことを「粗食」というなら、「肉ばかり」ってことになっちゃうのではないか、どうか。
確かに漬物は塩分がそこそこあります。
酢漬けのレンコンなんか出してもやはり塩分はあります。
こういう食事をいただいたら変なスナック菓子は食わないのがベターですw。
「今日はユキちゃんの誕生日だね。デコレーションしてあげるよ。」
婆さんは孫にそんな言葉をかけて学校に送り出したのでした。
えっ! ユキちゃんは驚いた。
そうだ、今日は誕生日だ。
「デコレーション。 デコレーションだ!www」
ユキちゃんは嬉しくてスキップしながら学校に行ったものです。
つい走ってしまった。
走れば時間が早く回る、まるでそんな風に考えていたかのようでした。
夏休みを終えた教室はいつもにぎやかです。まだみんな夏の思い出をお喋りしてる。
ハワイに行ってきたという子もいた。ネズミーランドに行ってきた子もいました。
あんまりユキちゃんには興味がありません。
そりゃあユキちゃんだって夏休みに色んなことをしたものです。
花火を庭でしましたし、海の家にも連れて行ってもらえました。波が怖いぐらい強くカラダにぶつかったものです。
でも今日は誕生日、なによりデコレーションが待っているのです。
ユキちゃんは過ぎた夏よりもこれから起きることにワクワクしていたのでした。
家に帰るとユキちゃんは素知らぬ顔をしていました。
いつもより気をつけて静かにしていた。
黙ってテレビなんかを見ていたけど本当は内心、とてもワクワクしていたのです。
やがて夕飯になり、おばあちゃんもお母さんに手伝ってみんなのお膳の仕度をし始めた。
「今日はユキちゃんのお誕生日だね。」
おばあちゃんがまたユキちゃんに声をかけるとお母さんたちは驚いた。
「ああっ。そうだっけね。忙しくて忘れてたヨ。ゴメンゴメン。」
「スマンな。忙しくてな。」
このところ父の印刷所は大忙しでした。それはユキちゃんも知っています。
もうすぐ選挙が近いかも知れないというので、あちこちからビラの印刷の仕事が回ってきているのです。
「かいさん、そうせんきょお?」
まだユキちゃんにはよく意味が分かりません。
でもいいの。ユキにはおばあちゃんがいるのです。
おばあちゃんは毎日忙しい両親に代わってユキの面倒をよく見てくれています。
そうして、食卓に早々と着くとユキちゃんはご飯の仕度をじっと見守った。
いつ来るのかな、いつ出されるのかな、ユキちゃんは期待で胸を躍らせました。
ご飯のお櫃、お味噌汁の鍋、焼き魚はよく脂の乗った鯖です。
冷奴に玉子焼き。ユキちゃんも大好き。
次々と茶碗やお皿がチャブ台に運ばれてゆきます。
「おう、どれどれ。今夜もおいしそうだ。」
お父さんが言いました。
いつものようにシンプルな食事ですが、食卓はとても美味しそうです。
みんなで食べる美味しいご飯。
ふっくらしたご飯はとても鮮やかで白く輝いて見えます。
そうして、最期におばあちゃんが大きなお皿を台所からいそいそと持ってきた。
どんなケーキだろう。ユキちゃんは飛び上がりそうなほどワクワクした。
「ほら、今日はユキちゃんの誕生日だよ。」
それは大皿にキレイに盛り付けられたおばあちゃんの手作りの糠漬けでした。
ニンジン、ゴーヤ、ダイコン、シシトウ。色とりどりで丁寧に盛り付けられていかにも美味しそうです。
それはいつもの小鉢に盛られた糠漬けよりもずっと豪華に見えます。
きっとおばあちゃんが色んな野菜を追加して漬けておいてくれたのです。
「おおっ、すごいな。キレイだ。よかったなユキ。」
お父さんが褒めました。
でも、ちょっとユキちゃんは涙ぐんでしまいました。
それには誰も気が付かなかった。
「ユキ、おばあちゃんが作ってくれた誕生日のデコレーションだね。色とりどり。よかったねぇ。」
お母さんもユキちゃんに声をかけた。
ユキちゃんはいつも糠漬けが美味しいと喜ぶ、そんな子です。
「ちょっと酸っぱくて塩辛くてとても美味しいの。」
いつもそんな風に自慢をする子です。
ユキちゃんにはおばあさんの漬けてくれる糠漬けが自慢なのです。
ちょっと間をおいて、ユキちゃんは元気に言ったのでした。
「おばあちゃん。ありがとう! ユキの誕生日だよ!」
色とりどりの糠漬けのデコレーション。
おばあちゃんはユキちゃんのために準備してくれていたのです。
大好物の糠漬けとご飯、ユキちゃんは食べ終わるとすっかり満足でした。
「やっぱりケーキなんかよりこっちがいいや。」
気持ちが嬉しいのです。出来合いのものをいただくよりずっと嬉しいのです。
ユキちゃんもそうして人の気持ちを大事にしようと思った誕生日の夜なのでした。
その夜、ユキちゃんは寝ながら少しだけ泣いてしまった。
どうしてなのか、なぜだか分からないけどちょっとだけ悲しかったのでした。
ケーキやクリーム、やはりそんなのが欲しかったのでしょうか。
その夜、ユキちゃんは夢を見ました。
美味しそうなケーキがテーブルにあって、食べようしてフォークを入れるとそれはウゾウゾと動く虫だった。とたんにワラワラとケーキの皿から逃げていった。
コオロギのような黒い虫が固まってチョコのフリをしていたのです。
白いクリームはミミズのようなものでした。
みんな見かけとは違ってニセモノだったのです。
クッキーや飴玉は、みんなプラスチックで出来ていた。
「こんなものは食べたくないよ。」そう言った子供がどこかへ連れて行かれてしまいました。
「見せしめだ」と言って、人々の見ている前で無理矢理に虫を食べさせられた人がいました。裸にされ、電柱に縛り付けられて何かの注射を打たれている人がいた。
ユキちゃんはとても怖かった。
大きなキノコのような傘を持った男の人がやってきました。
背丈が家の屋根ぐらいあります。黒い服を着て黒いシャッポを被っています。
みんなを見下ろして男の人が言った。
「ほら。このままでは太陽が隠れてみんな死んでしまう。」
「地球環境が危ないんだ。」
「その傘のせいだよ!」
ユキちゃんは言い返そうとしたけど上手く声が出ませんでした。
「うーん。うーん。うーん。」
ユキちゃんは悪い夢を見ていたのです。
それは人の心が踏みにじられる世界。
誰かがみんなに威張っている世界でした。
人を騙して無理矢理に虫を食べさせようとする世界です。
太陽をわざと隠しておいて天候が異常だと騒ぐ世界。
離れの印刷の作業所では音がしていました。
お父さんは急ぎの印刷の仕事をまだしていたのです。
そのビラに書いてあったスローガンをユキちゃんは知っていたでしょうか。
「地球環境のためにコオロギを食べよう。」
「民主主義を守るためウクライナを支援しよう。」
おそまつ
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