腐り報告
やはりこんな暑さでは絶対にダメになっているだろうということになった。
☆
冷蔵庫に入れるのを忘れていた食品は捨てることになった。
この夏の暑さ、階下で俺だけ床で寝てしまった。
きっと酔っていたのだろう。ろくろく片付けもせず、冷蔵庫に入れず、確かめもせず、ウダウダとザコ寝してしまい気が付いたら昼。
賞味期限の切れかけた生ものの処分品が12時間以上ウダる暑さに放置されていたことになる。
忘れていたことを起きてきた嫁に報告すると、嫁はとても嫌そうな顔をし、まずは確認してみようと言うと、顔を赤くしてそんなのやめなさいよと言い切った。
俺としては実は臭いを確認するなり、調理して味見してから判断しようかと思っていたのだが無条件で切れと言う。
こういう時の踏ん切りのよさは嫁ならではだ。
俺はまだグダグダと食えるかどうか考えていたのだから。
そういえば嫁の実家の話を聞いたことがある。
我々が半額処分品を買っていると言ったら驚いたそうだ。昔からそういうものは買ったことがないのが義母だという。家から食中毒を出しては恥ずかしいという考えらしい。最近は少し違って半額も買うらしいが。
カニの茶碗蒸し 半額 49円
豚肉の西京漬け260グラム 半額268円
朝食のウィンナーパック 半額152円
合計で469円の損失である。
これは手痛い。
よく本屋とかで「万引きされことはすごいダメージだ」という話があるが、まんざら嘘ではないと実感できる。
合計469円の損失をカバーするために、また半額やそれ以下の処分品を買ったとして、いつカバーできるかと考えればわかるだろう。もともと半額ばかりを買っているのだからこの先半額を買い続けたとしてもペイはできないのだ。
だから半額以下になったような例外的なもの、500円のものが200円になったものを手に入れたとして、半額からすれば50円安いわけだから、これを10回ゲットしなければいけない計算になるのだ。
そういうチャンスはあまりない。
まあ、忘れずに冷蔵庫に入れとけばいいんだけど。
生ゴミ受けに茶碗蒸しを流してみたら臭った。食品とはいえ工業製品だから、こういうどうしようもない状態になるとこんなことになるのだろう。やはり全部がダメだった。
西京漬けも漬物だからとちょっと思ったが、捨てようとする時には臭いがした。
ウィンナーのパツクは袋がパンパンに膨れていた。
ああ、その夜、やはり買い物に出かけて、当然のように雪印の話が出たのは偶然ではあるまい。当時の社長が「私だって寝てないんだ」とわけのわからん開き直りをして天下りぬるま湯体質の会社が潰れた。毎度のようにこういう食品が腐るという話になると出る。
やはり話が出た(笑)。
これらは全てまとめて、買った店で捨てさせてもらった。返した。
きっとラベルなどを見れば家庭ごみではないとわかってくれるだろうとは思う。まあこれまでそんなことをやったことはないのだし。
庭のコンポストで分解するにはいかにも大き過ぎると思ったのだった。
「エコって結局、自分が死ねばいいんじゃね」、と絶望的に思ったりもした。
食い物を捨てるのはさつぢんと同じぐらいの罪悪感があるのだった。
そういえば昨晩に買ったスズキのサクは何か味がしなくて妙な感じがした。マリネにすることにしたが、鮮度は落ちていたということだろう。
この暑さだもの。
何でも鮮度は落ちる。
