温度に注意と言っても忘れがち
豆腐を冷蔵庫で凍らせてしまった。
最近の冷蔵庫は上の段が冷蔵庫、下が冷凍室になっている。
ウチの冷蔵庫は下の冷凍室から冷気をファンで上へと引き上げている。冷気は重いので上から下へと冷やすのだ。
昔のほとんどの冷蔵庫は冷凍室が上にあった。
氷は上から取り出したものだ。
氷は上から取り出したものだ。
冷気を上へと引き上げていることを考えると、今のわざわざ冷凍室を下にしているなんてムダのように思える。
冷凍室から下の冷蔵室へ冷気を落としてゆけばいいじゃないか、と。
しかし冷やすためのコンプレッサーは重いので下にある。どちらにしても冷気を上に上げるファンは必要なのだ。
ではこのコンプレッサーを最初から上に配置しておけばいいということになるが、そうなると騒音の問題もある。
それにコンプレッサーは場所をとる。
冷蔵庫内部のデザインが上が極端に狭くなり、下が広々するということになる。
あんまり使い勝手がいいとは思えない。
最近の冷蔵庫はほとんど上が冷蔵室、下が冷凍室だ。
問題は冷気を上に上げて吹き出す出口付近が極端に冷えることだ。
その吹き出し口の近くに置いたモノは凍りやすい。
よほど暑い夏でないと注意してないと凍らせてしまう。特に豆腐でよく失敗する。
温度調節は何も衣替え、着るものばかりでもない。
自分の暑い寒いは分かっても、なかなか自分の肌感覚以外のことには気が付かない。
そのうち高齢になったらその体感温度すら分からなくなって熱中症になるという。
注意するには温度計など道具を使うしかない。
あ、いや、とんだムダ話www(笑)。
おうぞどきをつけて。
見ると凍った豆腐が黄色い。
乾燥した状態で売られているあの高野豆腐の色なのだ。
やはり高野豆腐は「凍り豆腐」なのだ。
私はつくづく感心してしまった。
凍らせてしまったので豆腐が冷奴にできなくなってしまった。
カオマンガイの付け合せならカッコウはつくかも知れない。ならばカオマンガイだ。。
鶏ガラの冷凍の残りを出してシューをした。大量の粉チーズのこともあるから冷凍庫の整理も必要だ。
今度はちゃんと湯通しをしたからダシのスープに鶏の臭みはない。
美味しい美味しいカオマンガイ。
スープが随分と取れたのでご飯を炊くのに使っても残ってしまった。
中華スープを作っていただいた。
スープで上唇をヤケドしてしまう。唇が引きつってしまっている。
自分がミツクチになったような感覚になる。
脂が混じっているのでスープといえども温度は百度以上というわけだ。私の注意不足だ。
クチをつけるものの温度まで気が回らないことがある。
自分以外の温度は感じにくい。
ヤケドして初めて熱かったと思い知る。
ミツクチの気分だ。
ミツクチとは胎児の時に鼻の下に上唇がくっついて癒着してしまったのか、上唇が裂けている状態。
昔も縫合をしたのだが技術が進んでおらず目立つ傷跡は残った。今はどうしているかは知らない。
子供の時分、そんなミツクチの同級生がいて、勉強熱心な子で優等生ともくされていた。
親しく話すこともあった。
ただ、彼の方は私を勉強のライバルのように思っていたようだった。
私の方はガリ勉型でもなく優等生でもなかった。やさぐれたサラリーマンのような子供だったw。
教師に歯向かい学校は遊び場程度に考えていた。
私にはその子との接点はあまりなかったが、二人は成績のことでよく名前を並べられ挙げられていたようだった。
私は普段はクラスでおちゃらけながらも、裏表のある、あまり人との関係が持てない人間、捻じれたヤツ、そんな子供だった。
ミツクチの子も塾に通っているらしかったが、お互いに深く立ち入るようなことはなかった。
彼も私という人間性は知っていて、付き合うようなことはなかった。
私も成績優秀な子とは知っていたが、そんな程度の距離だったように振り返る。
ある時、「全国模試」なるのがあって参加することになった。
学校単位ではなかったと記憶している。通っている塾で受けるよう推奨されたのだった。
私は親から受験料の一部をクスねた。
数万人、もっといただろうか、とにかく、全国でそれぞれ大きな試験会場が設けられ、子供たちが集まってテストを受けたものだ。
私は総合成績で全国18位になった。
結果の表が送られてきて私の名前が一覧の上の方にあった。
それはまるで相撲の番付表のように、びっしりと小さな字で1位から100位、200位ぐらいまでだったか、ずらりと見知らぬ人間の名前が並んだ成績結果表だった。
振り返れば当時はよくそんな競争を煽ったものだ。
しかし18位だ。別にトップでもないしベストスリーでもない。
私にはどうでもよかった。
学校に行くと、珍しくミツクチが私の席まで寄ってきた。彼は顔を赤らめていた。
「キミの名前を見たよ。」と、彼は結果表を私に見せて言った。
え、ああ。ミツクチもあの全国模試を受けたのか。
私は気まずい思いがした。
トップでもベストスリーでもない。野球なら補欠もいいところだ。バカにでもしようというのだろうか。
見ると、その結果表には私の名前のところに赤くシルシがしてあって、ずっと下の方、50位だか70位ぐらいのところにもひとつシルシがあった。
よく見えなかったが、たぶんそれがミツクチなんだろうと私は思った。
違う意味で私はまた再び気まずい思いをした。
私は君と競ったわけじゃない、私はその言葉を飲み込んだ。彼はこちらを意識していたと思った。
興奮していたように見えたが、彼がどれだけ熱くなっていたかは私には分からなかった。
私は黙ってやり過ごした。特に言うこともなかったのだ。
それにしてもこんな小さな文字で、よくも人の名前をわざわざ探したりしたものだ、そう私は思った。
彼は私の名前を探し出したのだ。
ミツクチがコンプレックスになっていたのか、よく勉強をする子だった。
唇をちょっとヤケドしたら思い出した。彼の名は思い出せない。
バター茶をいただいてひどくヤケドしてしまったこともあった。
差し出されたバター茶を飲んで人々の信頼を得ようとしたのだが、慣れていなかったのにやったもんだからひどいヤケドをした。
あの時は「ミツクチの気分」なんて、そんな冗談も言ってられないぐらいひどい目にあったものだ。
歯茎が猛烈に痛み、それは激痛だった。
結局、完治するまで半年以上は苦しんだ。文字通り毎日、私は悶絶し続けた。
油の入ったものはよく冷ましてから飲まないといけない。
百度以上になるのだ。
クチの中がヤケドするとひどく苦しむ。特に歯茎はw。
もともと根が貧乏性なので「熱々」なんてのを好む傾向がある。
火が通っていることはコストだと思う。だから冷めたら値打ちが下がると思っている。
いけない。
とんだ勘違いだ。
歯茎の粘膜をヤケドした状態でも私は酒を飲みに出掛けた。
冷えたビールがヤケドした歯茎に気持ちが良かったが、喉元を過ぎればまたズキズキと歯茎が痛んだ。
顔を歪めそうりなりながらも、私はそれを隠してBarで友人たちに付き合った。
その夜、仕度をしていると、今日も出かけるのかと聞かれた。
私はクチに詰め綿をして出かけようとするところだった。
金曜日だからね、私は答えた。
早く帰ってくるように言われ、私たちはキスをした。
すると私の歯茎の詰め綿に気が付いたらしい、そして烈火のごとく怒り出した。
そこまでして遊びに行きたいのか、呆れたもんだ、そんなにお目当ての子でもBarにいるのか、と。
私は情報交換をしなければならなかっただけだ。
酒は美味いがそれだけでもなかった。
私の事情を理解してもらうことはなかった。
おうぞどだいじに
