サーモスの変遷を振り返る
いよいよウチのポットがダメになってきたようです。
今年の夏はステンのティーサーバーを冷蔵庫に冷やして麦茶を飲んでたからポットは使わなかった。
そろそろ寒くなってきたからとお茶を飲むようになってお湯を沸かして貯めてみた。
なんだかすぐ冷めてしまうようなってたの(泣)。
このポットは十年ぐらいのもの。
買った時は千円ぐらい。
同じようなポットが今は三倍ぐらいの値段になっています。
買った時からなんだか頼りなくて、保温フィルムを着せてコール天のズボンを履かせてきました。
見た感じは着膨れしたダルマのようなのですw。
でも調子はよかった(笑)。
それでもパッキンがダメになってきたのか保温が弱くなった。
以前から妙な音を立てるようになっていたから、そういう予兆だったかも知れませんw。
買い換えを考える前にストアや棚を見てみたらサーモスがいっぱい。
ポットと同じ保温ができる。
我ながらこんなに買ったかと呆れてしまいます。
「サーモス狂時代」というのが我が家にはあったのでした。
あれこれ試して使ってみた遍歴の名残りです。
浮気じゃない。みんな本気。
頑張って自分のモノにしようとした。
暮らしに寄り添ってもらうパートナーを探していたのでした。
性格や肌が合わなかったり、曲がり方が合わなかったり、上付き下・・・(略)
おっ!お゛ーーーーっっ!、ごっほっん、ごほっ、
ご、ごほごほん(笑)。 げほーーーん・・・ゴホン。
い、いやなんか、む、ムセちったwww。
その昔は「サーモス」なんてモノはありませんでした。
世にあるのは魔法瓶ぐらい。中はガラスでした。
中を覗くとキラキラして万華鏡のようだった。ヤカンでお湯を沸かして保温した。
お茶を持ち歩きするというなら水筒でした。
夏なら遠足の時に持っていった水筒は冷凍庫で凍らせてみたりしたものですw。
魔法瓶型の水筒というのもありました。
やはり中はガラスで保温性はよかったのですが、ショックでガラスが割れてしまったり、容量が入らなかったりとひどい目に逢いました。
割れると中で粉々のガラスが音を立てた。
やがて魔法瓶は大型になってゆき、据え置きの押せば出てくるポンプ式になります。
その頃は団地があちこちに出来て、ニューファミリーの波が全国へ。
そのうち電気ポットが出てきて、いちいちお湯を沸かさなくてもよくなった。
その電源のコンセントはいつもつなぎっぱなし。どこか「鍵っ子」と重なるイメージ。
これは古いお湯だからと、ポットのお湯が沸いてるのにわざわざ捨てたりしたものです。
まだ人々が「お湯が常備されている生活」に慣れていない世の中だったかも知れません。
サーモスはバブルの終わりに出てきた画期的な商品でした。
保温するのはガラスじゃないものです。
魔法瓶のガラスの代わりにステンレスの二重構造になってて、間にはガスが注入してあってよく保温ができます。
これは便利とみんなが飛びついた。
出かける用もないのに珍しさもあってなぜかサーモスの水筒が飛ぶように売れた。
大きな水筒を持って競馬場やアミューズメント、ちょっとした公園に持っていって、カップルや家族がお茶を飲んだ。
でもまだ商品は未成熟、夏の水筒としても肝心の氷が入れられません。
どちらかと言うと温かいものが中心でした。
なんとかならないか、どうにかしたい、みんな考えた。
魔法瓶にお湯以外を入れて保温する、冷えたものを入れておく、そんなニーズが急速に広がっていたのです。
それには初期のサーモスは注ぎ口が狭かった。
欠点を補おうと、入りやすいように細長い氷を作る製氷機なんかが売られました。
すると口の広いサーモスが登場します。
家の製氷皿からそのまま氷を投入し、冷えた飲料を持ち歩けるようになりました。
不思議と当時「水分補給が必要」なんて盛んに言われたのはどこかの差し金だったのでしょうか(笑)。
その頃、サーモスはお一人様用に進化してゆきました。
一人用の水筒です。
各自が責任を持って持ち歩く。
広口の注ぎ口はマグカップを持ち歩くようでした。飲みやすい。
考えてみれば水筒ってものは一人用だった、みんながそれに気が付いた。
いくらステンで軽いからってそんなに大きなものは必要なかった。
これがまた大ヒット。
模様やキャラクターが鮮やかにボトルにプリントされ、色んな趣向を凝らして売られたものです。
ノベルティにも使われるようになってそのうちタダ同然で配られるようになった。
だんだんみんなが飽き飽きしてきちゃったw。
それが飽和状態になったと思ったのも束の間、小型のサーモスカップが登場します。
構造はサーモスですが卓上用です。
これならビールがいつまでも冷えたままで便利だと、蓋なしのサーモスカップが出回るようになりました。
猫も杓子もサーモスになって、お茶はいつもやけどしそうなぐらい熱くて、麦茶はいつまでもキンキンに冷えていて。
でも味気ない。ステンレスそのものなのです。
サーモスの「お茶碗」なんかあろうはずもありませんでした。
一人用のサーモスは今、太く低くなっています。壷のようになっている。
そこにスープを入れろカレーを入れろ、味噌汁を入れようと、別な形にまた進化しています。
この「サーモXXス」というのは実は会社の名前です。
最初にガスを入れた二重構造の保温水筒を売り出した会社です。
パッキンの緩くなったウチのポット。こういうのは魔法瓶なんてもう言わなくなった。
もう「魔法」じゃない。ミラクルではないw。
保温できるのが普通になっちゃったから。
だから普通にポット。
保温の出来ないただの水入れ容器は「ジャグ」と言ったりします。
電気で湯を沸かしてくれるポットもすっかり普通になりました。
その昔はガス湯沸かし器から直接熱湯が出てくるのに、みんな水からヤカンで沸かしたがったものです。
古い水はいけない、なんて話もあったものです。
土間の甕に溜めておいた水を沸かして飲んだ時代がありました。
生水はよくない、なんて今でも旅先で言ったりします。現地の人々はその水を飲んでいるんだけどw。
「水が合わない」なんてコボすのもそんな昔の名残り、思い込みもあるw。
一杯の白湯(さゆ)を大事に飲んでいた時代もあったのです。
その頃は湧き水を普通に飲めた。冷たい井戸水がどこでもあった。喉を潤すのはどこでもできた。
反面、お湯は貴重なものだったのです。
風炉を使って茶釜に火を入れ続け、面倒を見ていたことを考えればありがたいもの。
誰かが世話をするものという時代があったのです。
現代では「鉄瓶趣味」というのがあって、そんな昔を楽しんでいる人たちがいます。
南部鉄なんかの鉄瓶を火鉢にかけて白く湯垢が出るその風情を楽しんだりします。
考えてみれば「温かい白湯が欲しい」なんて、今じゃ病気にでもならないと言わない科白かも知れません。おうぞどだいじにw。
サーモスの安い類似品が出回るようになって買い集めた当時の水筒をまた引っ張り出してみた。
細長いサーモスタイプの大きな水筒と小型のサーモス。
この二つで今のポットの量ぐらいは入ります。
そういえば初期のサーモスはよく水垢がついたものでした。
これはその次の世代のもの。だから水垢はつきません。
最近の電気ポットも水垢などとは無縁でしょう。
そんな一番最初のものは捨ててしまった。
見えないところでもサーモスは進化してきたのです。
せっかく使わないでいるのならと試してみましょう。
控えの選手も使ってやらないとかわいそうです(笑)。
細長いものは不安定だから熱湯を入れる時は注意しないといけません。
パタンと倒れたら火傷してしまう。
過ぎた時代を懐かしく思い出しながら暫く使ってみるつもりです。
このサーモスでアタシも家内と競馬のジャカン・パックなんかに出かけたものです。
もうすぐかとw。
ごうぞどゆっくり
