バッタを看取ったこと
買い物から帰ったら家内が言いました。
「バッタがいたの。服について入ってきちゃったみたい。」
探して見るとリビングのカーペットに小さなチビのバッタがいた。上を向いてアタシを見上げた。きっと子供だろう。
ショウリョウバッタというものです。
竹をナナメに割ったような顔をしています。
よく飛びますw。ジャンプするのが上手。
バッタと言うととトノサマバッタなんて言われますが、どちらかというとアタシの地域では昔からこちらの方が身近でした。
それは小さくて、いかにも産まれたてに見えました。
アタシは捕まえて外に出してやろうとした。
しかし彼は、その手を見事にすり抜けて飛び上がり棚の裏、一瞬でどこかへ消えてしまった。
やれやれ。虫にこちらの気持ちは通じません。
懐中電灯を照らしてあちこちをよく見たのですが見えません。
どうしても見つからない。
それから、色々と家事をしながら1時間ぐらいは探したでしょうかw。とんだ面倒をかけさせられたものです(笑)。
結局、子供のバッタは見つかりませんでした。
どこへ消えてしまったのか。
まだ産まれたての小さなバッタ。
部屋には草むらなんかない。鉢植えもありません。
諦めて寝た。
翌日、家内がキッチンでバッタが倒れているのを見つけた。
家内が大きな声でアタシを呼んだ。イニシャルで呼んだ。
「草が落ちてるかと思ったら、昨日のバッタだった。」
すっかり枯れ果てようなた姿で緑色の小さなショウリョウバッタは骸になっていました。
キッチンのそばのカゴにはカブが置いてありました。
そのカブからは青々とした緑の葉が出ていた。
ああ。
嗚呼。お前さんはそれを目指したのか。
アタシは時々、「走馬灯」ということを考えることがあります。
それは人生を終える時、流れるほんの一瞬の振り返りの記録フィルムだと言います。
色んな顔や色んな想い出、それが早送りされて我々は旅立つといいます。
まだ産まれたてのバッタは何を振り返っていたのか。
アタシの場合、その時は正直ロクなものは見れないと思うのです。
きっとGを見るんだろうと思ってる。
Gとはゴキ(略)、「ガメラ」なんて我々が呼んでいるあの虫のことです。
あの黒い油っぽい背中の虫の姿をアタシは見るんだと思う。壁なんかにとりついて、いよいよひっぱたこうとしているその姿を。
だって、ヤツを見つけるといつも凝視し、やっつけてきたのです。
一番見ているものではないのか。
逃がさないようにじっと見てスリッパなんかでひっぱたこうとする。逃げられてしまう時もあります。
あまり頻繁には出逢わないけど身近で気になる存在です。
秋になって何度か見かけた。むしろ夏場の方が見なかった。
自分の人生の中でよく見つめているものといったら、結局はアレを一番凝視しているんじゃないか、と、そう思う。
だから走馬灯ではきっとアレを見てしまうと思う。
なんだか嫌だなぁ(笑)。
でも嫌な予感しかしない、だからきっとそうだw。
その昔、一人暮らしのアタシはガメラにひどく反応したものです。
怖かったというかとても苦手でした。妙に嫌なものでし。
捕まえようとしたらこっちに向かって飛んでこられたりして、そこで声を上げてしまった振り返りのこと。
苦手だった時は掃除機なんかで吸い取ろうとしたり苦労した。
今では憑き物が落ちたようにすっかり平気になりましたた。
たまに出逢うどころか、途上国では日常的に大量にガメラがいます。汚い場所で南国ならビックリするほど大きい。そんな体験でアタシはすっかり慣れてしまった。
今は平気でやっつけています。
身近でなかったから苦手にしていたのか、それでも今は仕留めるのに凝視している。
ヤツは逃げるから。
むしろミッキーの方が恐怖だw。
あれは家を壊すから(笑)。
でも、つくづく思う。
妙にガメラにアタシの意識が向いているのが分かります。
だからアタシはきっと死ぬ走馬灯の瞬間、アイツの姿を思い出すんだろう。
触覚を動かしてこちらの出方を探っているアイツの姿を。
転生を信じる人々はガメラだって頃しちゃいけないなんて言ってたけど、刷り込まれてきた不潔という感覚でどうしてもやっつけずにはいられない。追い掛け回してしまいます。
バッタとはまるで扱いが違う(笑)。
どういうわけかガメラ(仮称)にアタシは異常に執着し、アタシはここまで生きてきてしまった。
つまんない最後の走馬灯だろうなあと思う。
緑のオアシスを求めて彷徨う方がまだいい。それがカブの葉っぱだったとしても。
目を見つめて頃せ。
おそまつ
「それじゃあ奥方よりGを見てるってこと?」
なーんて突っ込みは当然にあることでしょうwww。
しかしサラリーマンだって、「野郎の同僚の方が嫁さんよりもずっと長く亭主と顔を突き合わせてる」、なんてよく言う話ですw。
亭主元気で留守がいい
なんてのも有名な話。
そして濡れ落ち葉だ、武者小路キミマロとか、そんな末路になるんだw。
まあそこまで言わなくとも、アタシの場合は「隣」にいるというのが大きい。
買い物なんかに行ってオトコがこっちをガン見してくる。
どうやら家内を見てるらしいんですが、アタシはそうは見れません。
ちょっとセクシーなカッコしてて、いいなと思っててもw、悲しいかな隣にいたらそうは見れないものです。凝視するには近すぎます。
隣の芝生は他山の石だwww
ふたたびおそまつ
※ その後の余談です。
それから翌日、ショウリョウバッタの赤ちゃんの骸を発見した後のことです。
家内がトイレに言ったら騒いだ。
「ああああ、もうぅぅぅぅ。イヤぁぁwww(泣)。」
どうした。
またあのショウリョウバッタの子供がいるじゃありませんか(笑)。
洋式トイレの便器の中、斜めになったところに座ってた。
こちらを毅然として向いて、堂々と、
姿勢もよく、上を見上げてまたこちらを凝視していた。
ティッシュで包んで外に出そうとすると今回は抵抗もなくそのまま捕まってくれた。
無事に外の草の生えるところに出してあげられたのでした。
ごうぞどぶじで
