山菜、コゴミ噺
「コゴミ」という山菜については、アタシはいい歳になるまで知らなかった山菜です。
昔は今のように商品パッケージの内容物をみるという習慣もありませんでしたから、昔の「山菜水煮」にコゴミが入っていたかどうかも分かりません。
まるで知らないものでした。
ある時のこと、登山に家内と遠くの山に出掛け、遭難寸前で下山した。
まだ雪の残るGWで、シーズンの終わったスキー場に出るとフキノトウがある、なーんて喜んでとってたらすっかり遅くなってしまった。
山のバスはもう来ない。
地図を見て「縦走すれば国道に出れる」と考えて、歩くことにした。
悪ければ火を焚いて野宿だw。
途中、我々は鹿に何頭か見られたw。そんなんでも喜んでいた。危ない危ないw。
陽はどんどん傾く。どんどん暗くなる。
ほうほうの体で疲労困憊し始めた。
最後はヒッチハイクなんかして、日が暮れた頃にやっと下山したものです。
ふもとに降りて、駅に行ったらまだ電車がありました。
行くところまで行こうということで、たまたま来た電車に乗り込みます。
電車は暗闇を走る。
生活に使っている利用客がほとんど。
だいたいもう観光客の時間じゃありませんww。
列車は山を抜けトンネルをくぐり、外はずっと真っ暗でした。
アタシはなんだかジレったくなってきた。
このまま真っ暗闇をただ走ってはもったいないというもの。
日中だったらきっと美しい景色が見れることでしょう。
気持ちはどうにも収まらない。
線路の下、谷の方に河が流れているのにふと気がついて、観光地でもないようなところで降りてしまった。
もう九時をとっくに回っていて、あたりは暗い。
駅から見えた旅館を訪ねてみたら「食事はもう出せない」と言われてしまいます。
いやその分、安ければいいのです、なんて言ってw、ともかく世話になることにしますw。
川沿いの、釣り師ぐらいしか来ないような旅館でした。
風呂をいただくと、「お腹が減ったでしょう」なんて言って、オバちゃん、焼きうどんとオニギリを出してくれました。味噌汁はなし。
ありあわせのものをなんとか出してくれた感じです。
何も出せないなんて言われたけどなんだか得をした気分だった。
翌朝、朝ご飯は普通に出してもらえた。
よくある旅館の朝食でした。山の旅館だというのに干した鯵が出た。
朝食の時、「『コゴミ』が採れたので持ってくかね」、なんて言ってオバちゃんからごっそりコゴミをいただいた。
そこは乞食、コゴミがなんだかはよく分からなかったけど、もらうものは何でも喜んでいただきました(笑)。
きっと、アタシたちが山ほどフキノトウを持ってたもんだからそれを見て、気を利かせてくれたのか、そんな風に思って礼を言う。
会計しようとすると普通に通常料金を請求されていた。
・・・あ、あれ?(汗)www
確かに普通の旅館の夕食は食べれなかったけど、色々と出してもらって、コゴミまで貰ったもの。
ここはお互い様というわけでしょうか。
コゴミは通常料金になっちゃった代わりだったかも知れません。
素直に支払って、それならとコゴミの調理法なんかを詳しく聞きました。もう遠慮はないww。
オバちゃん、スジの取り方なんか教えてくれた。
「料理しやすいからね」なんて言ってくれた。
それがアタシたちにとって初めてのコゴミです。
帰って調理して美味しく食べると、山の味を感じた。そして鯵も思い出した。
おそまつ
