電話噺、ちょっと待ってキャッチ入っちゃった♪
世間では夕餉が済んで、食事休みの夜の時間です。
その子の部屋にはミュージッシャンのポスターなんかが貼ってある。
ボン・ジョビなんて、とんだ見下げ果てた野郎だと今になって分かりましたがww、昔は誰にも分からなかったw。
そこそこ豊かな家庭、不自由のない家庭の子。
健康的で文化的な生活。
ずっと長電話をしていても、野球を見ている父親が実は電話代を気にしてるのはトンと気がついてない。

一家の電話を占有し、もうかれこれ一時間、二時間になるのか。
愚にもつかない話を続け、青春時代特有の気だるい怠惰を満喫なさっているのです。
明日の話題、友人たちの噂、テレビやラジオの話に花が咲いていた。
そしてどうやら、やっと長電話が終わったようです。
アタシが電話をかけると、ずっと話し中だったのでした。
アタシは外の公衆電話からかけていた。
いい加減に会話が終わって、電話が開くのを待っていた。
通話中、アタシはずっと外で待っていたのでした。

やっと電話がつながると、その子が出た。
やれやれと、アタシは要件を話し出す。
電話など要件だけだ。
よもや話なら会ってからすればいい。
どうせさっきまで話していたのは知っているとばかりに、アタシは雑談には取り合わず、要件だけを続ける。
そうして、大事な話、真剣な話をアタシが始めてゆくと、突然、ふと話を遮ってアタシに言うのです。
「あ、ごめんw。キャッチ入っちゃったww♪」
大事な話をしているというのに、アタシの通話は突然に中断される。
それほど大事な通話が割り込んできたのでしょうか。
どんな緊急事態なのか。お前の家が燃えているとどっかから通報があったのかw、いったい何の要件だというのでしょう。アタシはジレる。
どだい、アタシの通話の方が内容としては「重い」はずなんです。
細かくて複雑で解像度が高い画像のようにそれは重いw。
アタシの重い話は、例えるなら一秒に80メガバイトぐらいの重さですw。
どうせ他の電話なんて10メガバイトもない。
ママ友から昼のお誘い? そんなの5メガもないでしょう。
オヤジさんがリストラ?、それだってせいぜい40メガバイトだww。
アタシの通話の中味の方が重いのに、それなのに、回線はキャッチホンが優先されてしまう。
家庭のルールかなんだか、他から着信したものがあると、アタシはそのまま待たされているる。
そうして、電話が切り替わると、アタシを置き去りにしてまた暫く通話がこちらに戻ってこない。
通話は無音のまま。
雑音も聞こえやしない。
つながっているから料金はかかり続ける。チャリンチャリンと無慈悲に金が落ちてゆく。
いい加減に十円玉も百円玉もなくなってくる。
アタシは焦る。汗までかくw。
公衆電話は濡れた長靴のような臭いだ。
とうとう硬貨が切れて電話が切れてしまった。
なんてこと。
アタシはかけ直さないといけない。
千円札を両替にと、近くの店に行く。
やはり野球を見ていた店主がのそのそと奥から出てきて、両替に嫌な顔をする。
そんならペプシだ、ぺプシをくれ。
「スプライト」なんて気分じゃない。そんな爽やかじゃないんだw。
コーラはダメだ、カッコツケて髪をなでつけてるヒマだってない。
そうすると店主、「冷やし代だから」と、5円を余計に取った。
「ウチは冷やし代を貰ってるからね・・・ww」
・・・む、むむむ(怒)。
アタシは頭から火が出そうになる。
我慢だ。
しかし、まるで我慢ばかりの人生ではないかw。
アタシはペプシのボトルを持って戻る。
ジャラ銭をポケットにそのまま入れ、また電話ボックスに入る。
そうして電話をすると、また、、、
また話し中だ!
なんてこと。
アタシの着信はキャッチじゃないの?!
ねえ!
聞いてる?!
誰か!
助けてくれ!
アタシの電話はまだ要件が途中なんだ!
電話ボックスの中でイライラし、アタシは人気のない街角で捨てられた犬のような気分になった。
結局、三十分たっても一時間立っても、また電話は通話中のままだった。
アタシは一人暮らしの貧乏アパートに帰って、寝た。
「ちょっと待って、キャッチ入っちゃった♪」
アタシにはトラウマになった言葉だ。
おそまつ


※ 長電話ってのはやられた方にダメージを与えます(笑)。
何を話してるか分からないのに、ただ通話中だってのに、なぜかこちらがダメージを受けるものですwww。
あの待たされている感じは病院の待合より、レジ待ちより、信号待ちより、なによりもストレスになります。

まあ、かくいうアタシも長電話をさんざんしたことがありました。
相手はキリスト信者の友人でした。
相手からの電話だったもんだから遠慮なしに議論に応酬したものでした。
アタシにはそういうコスト意識があるんだけど、たいていの長電話連中というのはそれがない。みな豊かだw。
長距離ではなかったけど、お互いに興奮し、電話で激論になった。
確か、キリストは実在していたかどうか、聖書の話は事実かどうか、そんな話だった。
でもまあ、そん時はキャツチホンではなかったけどw。

話し中って、つくづくイライラさせられるものです。
役所なんかに電話して、ひどく待たされると激怒したくなるww(笑)。
なぜか電話なのに「タライ回し」という言葉が脳裏をよぎる、こだまするw。
だいたい、ああいう役所なんて、対応はバイトにばかりやらせ、当の役人は直接話をしないようにしている。
いい歳をした連中が逃げ回っているんだw。
だからアタシはお姉ちゃんなんかより担当に回してくれと、やんわりと言う。
ま、まあ・・・。
こう考えると、アタシ、そうやってよく電話口で怒鳴ることがある・・・(笑)。
ちょっと反省しよう。
興奮しても相手はまるで気にしないんだから。
どんな馬鹿役人でも優しく説明してやらないといけない。
でも電話だけになかなか難しいのです。
相手がアタシの真剣な話を聞きながらどうやって責任逃れをしようとか、どうせやりもしないとタカをくくって鼻くそほじくっていると思うと、いてもたってもいられないから。
アタシはお前をもうキャッチしてるんだよ!www
再びおそまつ
