隠されたディスコテック

　そこは薬物の取引もされているようで、行くなら気をつけろと、知る人ぞ知るようなディスコテクでした。

　表だって看板はありません。

　こちらは音楽を聴いて踊って、酒をやりたかったというだけ。

　私は群集に埋没し一人を好んだ。

　人に聞くと、あまり勧めないよ、なんて言いながら渋々と教えてくれた場所でした。

　そこは廃墟のようなマンションの二階。

　エントランスはシャッターが下り、裏口から入るようになっていました。

　表のエントランスには小便が溜まって水溜りが出来ていた。

　遅い時間に行くと、みんなが階段に並んでいた。

　入場料を払って、入場チェックを受けてから入ります。

　狭い、20畳ほどのダンスフロアでした。

　壁には一面の鏡、観客席のような椅子席、DJブース。

　トイレは汚く、いつも汚物が溢れていた。

　そんな場所は外国人が来れば警戒されるのが常です。

　そんな場所を恥だと考える人々もいて、人によっては「そんな店はない」なんて言い張ったりする。

　地元の連中以外が来てはいけない、隠された場所なのでした。

　入るとみんなが私を珍しそうに眺めた。

　まだ早いのでフロアでは誰も踊っていない。みな外のカウンターで酒を呑んでいる。

　入っていくとクスリみたいなのを急いで隠したのが横目に見えた。

　こちらの目的は音楽を聴いて踊り、ただ酔いたいだけ。

　そんな地元民だけのための隠された場所というのは危険でもあり安全です。

　観光客が来るような店はカモにされ、必ず狙われる。

　そういう店では同化してしまえばいい。

　自然に入り込んでしまえば誰にも目立たない。

　そうして酔って踊って、やがては常連になっていった。

　まさか潜入捜査でもあるまいしと、私が笑うと、彼らも照れたように笑った。

　そのうち早い時間から入れば入場料はタダにしてくれるようになった。

　私は顔パスで入るようになった。

　私は9時、10時、早い時間から踊り始め、深夜まで酒を呑んでは踊った。

　他の連中は12時を過ぎてからやってきます。

　私が人のいないフロアで踊っていると、早いうちから人が集まってくるようになった。

　商売繁盛w。

　私のおかげで早いうちからディスコテックは満員になるようになったw。

　客は地元の連中ばかりです。

　すぐに店に馴染んで、彼らと付き合って深夜まで、晩を過ごすようになりました。

　そこは観光客のいない店です。

　私は外国人。

　そのうちあいつは大丈夫だ、なんて、みなが安心するようになってゆきます。

　私は部外者。

　その部外者であることをもって信用されるようになる。

　私も裏切ったりはしない。

　彼らだけの特別な場所は、やがて私にも特別な場所となった。

　壊さないように秘密に、その場所を大事にしておきます。

　

　いつも一人で私はそのディスコに行きました。

　遠慮した挙句、ガレキやゴミをかきわけて、裏口への近道を行くようににした。

　

 

　おっとw、見るからに観光客のような連中が迷い込んできました。

　混雑する中、キョロキョロして辺りを見ている。二人。外国人ですw。

　サっと、私は彼らに隠される。

　私の前に女の子、男の子が立ちはだかるように立って、私が見えないように踊ってカバーする。

　私のような外国人はここにはいないと、彼らに見せるためでしょう。

　私は人垣で隠される。

　私は知らん顔をして踊り続けるだけ。

　ガンジャをちょっと貰って吸い、私はその女の子を抱き寄せて踊った。

　隠れてキスをした。

　そのうち、彼らのうち、誰かが困りごとを頼みに私に何か言ってくるでしょう。

　そうして私は巻き込まれてゆく。

　もとは私は異分子だったのに。

　私は断らない。拒絶はしません。

　正しいことならやってあげる、私はそう言ってみせる。

　そうして、私はどんどん巻き込まれてゆく。

　それはしょうがないこと。

　隠れた地元だけの店に入ってしまった義理、ご縁なのです。

れっつ・だんす・ダンス