彼らだけの時間と月夜、ボディガード奇譚
一人のお手洗いが済み、部屋に戻ってみるとシーンとしています。
他の方々は夜のお手洗いは必要なかったのか。
あれ? でも、戻るとき、部屋から声が聞こえていた気がした。
さっきまで、なんだかブツブツと話し声が聞こえていたような、ないような・・・www(笑)。
・・・考えてみればまるでホラーですww。
アタシが扉を開けたらボショボショしてた音がピタリと止んだ感じだった。
「ダルマさんが転んだ」状態になったんだからw。
そしてみなさん微動だにしないでベッドから半身になって起きて扉を開けたアタシを見ていた。
部屋は静まり返っています。
彼らの内輪だけで、何かの会議でもあったんでしょう。
彼らだけの時間があったのです。
アタシはそんな風に思いました。
本来は、もう寝かせたということで放っておいて、アタシは夜の先生方とのお付き合いに行ってもよかったんですが、アタシは彼らが寝付くまで見ていることにしました。
見終わったら先生たちが別室で酒盛りをしているところへ合流すればいい。
タダ酒もそうはなくならないだろう、とw。
アタシは「ではおやすみなさい」なんて言いました。
そのまま、彼らが寝付くまでと、アタシは部屋の真ん中、ベッドに囲まれた椅子に静かに腰掛ます。
アタシの方こそ、ハタから見ればずっと変な野郎だったかも知れませんが、まあ、そこはお互い様ですww。
アタシは窓の外の月を眺めていた。
気がつくと、全員がいつの間にかこっちを見ているんだ。
じーーーっとwww。
その晩はやけに明るい月夜で、大きな宿舎のカーテンもない窓から月の光が差し込んで、とても静かでした。
高原なもんだから夏の夜でも過ごしやすくて。
アタシはなんだか妙な気持ちになって、ひとりごちました。
「それはそうと、みなさん。大学ってえのは案外といいものですよ。みなさんも大学入学に挑戦してみてはどうでしょう。なーに、ちょっとやれば受かりますから」
なーんて、ちょっとした訓話をやったw。
別にこの人たちは頭が悪いわけじゃない。
ちょっと普通とは違っているだけなのです。
その部屋にはアタシと彼らだけ。
アタシが口を閉ざすとしーんと静かです。
静けさしかないの。 誰の声も、息遣いさえも聞こえない。
アタシだけなら彼らと意思疎通ができるような気がしたのでしたが、しかし相変わらず彼らは黙ってじっとしているだけだった。
聞くでもなくじっとした沈黙。月夜が覆っているだけの部屋です。
彼らから反応はありません。
身じろぎもしない。
寡黙な眼差しでじっとアタシをボンヤりと見ているだけです。
あの時、もし、「アタシねぇ、実は人を殺したことがあるんです」なんて、もし言ってたらどうだったのかwww(笑)。
色をなして騒がれたりしてw。
それともやはり黙ってたんでしょうか。
そんなことを振り返ります。
なんなら、ああいう人たちを教会の懺悔室に、彼らを雇うというのはどうか。
なにしろ彼らはイタズラな好奇心や余計な会話は全くないのですからw。
どんな罪でも告解したくなりそうですw。
ともかく、その時の一瞬のことはまるで「神隠し」にあったように感じられました。
予告もなく、全員がなぜか一斉に、申し合わせたようにプイと寝てしまったのです。
スッと六人全員が同じときにw。
その部屋から彼らの意識がふっと消えたのがアタシには感じられました。
彼らの世界が消えて、彼らが眠りについたのが分かった。
それがわずか、コンマ何秒かそこら。
気がついたときにはもう彼らは寝入ってイビキをかいてしまいました。
アタシは彼らの時間に少しだけ触れたのかも知れません。
夢のようなステキな一瞬でした。
その時、輝くような月が窓から差し込んでいたことを重ねて振り返っています。
ありがとう。
