ロイヤル・ストレート・フラッシュ「キング」
「ロイヤル・ストレート・フラッシュ」というのはポーカーの最上級の手です。
☆
カードが揃った時にできる「役」のことです。
私たちがとあるスーパーでたまに見かける中国嫁を「エース」と呼び始めた時、実はトランプはあらかたナンバーが揃っていました。
そのトランプの大物、そのひとりが「キング」です。
キングとは「K」、つまり「13」です。
人はその顔つきで性格や性根というものはだいたい分かってしまうものです。
特に男性は顔に責任があります。
男は顔で語り、見られることを意識し、仕事をし、人と付き合い、生きていくものです。
ちなみに女性は「ボディ」かと。
まあこれは、あくまで私の持論に過ぎませんがw。
そうして歳をとった男性が、虫唾が走るような顔をしていたとすれば、それはまず間違いなくクズです。
民主党の岡田がみるみるうちに醜くなっていったことも、小沢一郎がどんどん歪んだおかしな顔になっていったことも、石破茂にしても、それらは決して偶然でも何でもありません。
男は心が歪めば必ず顔に出ます。
汚れたうつろな目をして、どこかにねだる相手がいないか、財布でも狙っているのか、すがりつこうとするように周囲を伺う男。そんなズルそうな男の顔があったらどうでしょう。
いつも目がうつろで片目が半開き。
首をかしげ、スーパーを徘徊していた老人がいました。
彼が「キング」でした。
初めて見て、すぐに彼がおかしいことが分かりました。
まさにキングは接触したくない人、近寄りたくない老人でした。
彼はいつも唇を剥いて、それこそ昔のいかりや長介のようにしていました。
まるで磁石に操られているかのようにして、行く当てもなくスーパーをウロついていました。
そして常に人々に向かって寄ってくる。
人にぶつかろうとするのです。
老人です。
きっと人が恋しいのでしょう。
寂しいのです。
絶望しながら誰かにすがろうとし、他人を奈落に道連れにしようとしている、そんなオーラが感じられたものです。
彼の日大の帽子や皮のジャンパーなど、最初に遠くからチラりと見かけた時にはお洒落に思えていたものが、すぐにその理由が分かりました。
それは彼にとってのネタでした。
彼はなんとかして人に注目されようとし、それをキッカケに話しかけよう、接点を得ようとさえしていたのでした。
全てはそのためのネタ、小道具だったのです。
私たちは彼を見て、「高齢化社会の挙句、スーパーにゾンビが徘徊するようになった」、そのことを知りました。
やがて彼は並みいるゾンビの中でも筋金入りであることがわかりました。
彼は買い物に来ているのではありません。
それこそいつ来ても彼はいました。
そして何の用があるわけでもない。
彼はゾンビの中のゾンビでした。
「キング」という呼び方は、まさしくその名前に相応しいものでした。
ありとあらゆる毒を含んでいるように私たちには見えましたから、その名前はうってつけに思えました。
私たちは彼に近づかないように気をつけました。
きっと我々が密かに避けていることも彼にはちゃんと分かっていたでしょう。
しかし彼は我々の方へとさりげなく近寄ってくる。
無言で。まさにゾンビのように。
彼は歪んだ目と傾いた顔で、不貞腐れたように唇を剥いて裏側を見せながら、いつも誰かの目を捉えようとしているようでした。
冷蔵ショーケースにかがんでいる主婦なんかがいると、彼は寄っていって横から盗むようにその顔を覗き込み、見つめるのです。
そうして、そんな彼が誰かに話しかけようとする瞬間を私たちは何度も見たことがあります。
その度にその女性たちは、まるで自然に魚が障害物を避けるように、スッとどこかへ体をかわしていました。
みな、彼のことを知っていたのです。
彼が買い物をしているのを私たちは見たことがありません。
いつもフラフラとスーパーの混んでいるところへ、人が集まっている方へと彼は吸い寄せられてゆきました。
そして商品を眺めながら、そのフリをしながら、誰かに触れようと彼は体を不安定に動かしていたものです。
コロナ騒ぎの直後から、キングを見かけなくなりました。
「危険厨だったんだぁwww」嫁がそのことに思い至り、声を上げて言いました。
意外と臆病だったのでしょう。コロナはまるでゾンビ感染のようでもあります。
今はスーパーで彼を見かけることはありません。
今、ゾンビのキングのいなくなったスーパーにいると、私たちはつい、商品を片っ端からカゴに入れてカートごと持ち去りたくなる衝動に駆られます。
もう持ち去りはフリー、外はゾンビだらけの世界という錯覚です。
食料を集めてでかけようぜ。
さあ、お前はショットガンを構えて。
撃つときは頭を狙え。
おうぞどだいじに
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